自然情報

扇状地(沖積錐) 2022.04.03

河川が山地から平地に流れ出る所にできる扇子のような形の地形として「扇状地」を習ったことを覚えている方も多いと思います。西の原は、男三瓶と子三瓶から崩れてきた土砂が“扇谷”から流れ出ることでつくられた扇状地です。
扇状地の中でも、主に土石流によってできる、小規模で傾斜の急なものを「沖積錐」ということがあります。西の原に点々と転がるデイサイトの岩塊は、土石流によって運ばれてきたものなのでしょう。沖積錐は傾斜が急な場合が多いですが、西の原の傾斜は概ね8度程度で、沖積錐としては緩やかなようです。地形的に、土砂の供給量や土石流の発生数が少ないことが影響しているのかもしれません。
悪天候のため、今年は火入れがおこなわれなかった西の原。火入れができれば、地形がもっとよく見えるようになるかもしれません。来年を期待して待ちたいと思います。

(学芸課 今井 悟)


マメコバチ 2022.03.27

春の間だけ姿を見せる、マメコバチが活動を始めました。ミツバチほどの大きさで、サヒメルに設置したヨシや竹筒の穴を利用し、営巣を行います。暖かい日には、たくさんのマメコバチが飛び交う様子を見ることができます。このハチは単独性でとてもおとなしく、人が近づいても刺してくることはありません。
実は人の役にも立っており、リンゴやサクランボなどの果樹園では花の授粉に利用されています。

マメコバチと営巣しているヨシ筒

(学芸課 皆木宏明)


ふたご座 2022.03.20

日暮れ後に頭上高く並ぶのは仲の良いカストルとポルックスの兄弟。二人の名前がついた星を頭にして体を連ねると、ふたご座ができあがります。面白いことにカストルは、望遠鏡で観察すると星が2つになる二重星です。

(学芸課 太田哲朗)


夏羽のアトリがやってくる 2022.03.13

昨秋に紹介したアトリですが、3月下旬になると装いをかえた姿で水場にやってきます。少し前の記事と比べてもらうと一目瞭然! 真っ黒な頭に、鮮やかなオレンジ色が目立ちます。この変化は、生え換わるのではなく、羽根の端がすれてけずられ、内側にある鮮やかな色合の部分が見えるようになってくるからです。夏羽のアトリは4月下旬まで水場に飛来することがあります。

水場に飛来したアトリの群れ。夏羽になるとと雌雄がはっきりとちがう。頭が黒い個体がオス。手前右向きの頭が薄茶色の個体がメス。 2019年4月24日サヒメル水場撮影
アトリ夏羽のオス。頭全体が黒い。2012年04月17日サヒメル水場撮影

(学芸課 星野由美子)


プレセペ星団 2022.03.06

かに座には目立つ星はありませんが、プレセペ星団という特徴的な星の集まりがあります。今ごろは南東の空高くに出ていて、街明かりのない三瓶だと、肉眼でもぼうっと見えます。古代ギリシャ人はロバが食べる飼い葉に見立てたのだとか。双眼鏡を使うと、大きな星の集団に見え、みごとです。

かに座 三瓶自然館サヒメルで撮影

(学芸課天文事業室 竹内幹蔵)


ロゼット 2022.02.27

残雪が点在する三瓶山北の原。まだ何も生えていないようですが、地面のところどころで植物の葉を見かけます。地表に葉を丸く広げた状態はロゼットと呼ばれ、そのかたちがバラ(ローズ)の花びらに似ていることが由来といわれています。

ノアザミのロゼット
ブタナのロゼット

(学芸課 井上雅仁)


裸芽(らが) 2022.02.20

冬芽には、芽鱗(がりん)がしっかりと外側を被い寒さから芽を守っている鱗芽(りんが)と芽鱗がない裸ん坊の芽、裸芽(らが)があります。裸で大丈夫?と心配になりますが、裸芽は裸芽で一番外側の葉に細かい毛をびっしりとつけ、冬の寒さをしのいでいます。写真はムラサキシキブの裸芽、2枚の小さな葉が向き合うようについています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

(学芸課 松村美雪)


おうし座の散開星団「すばる」 2022.02.13

2月半ばの夜8時ごろ、晴ていて、街明かりや月の明かりがない場所で空を見上げると、頭の真上近くに、ぼんやりとした光のかたまりが見つかります。散開星団の「すばる」です。目がよい人は、5個か6個くらい星が集まっているのが分かります。写真に撮ると100個以上の星が写ります。

(学芸課 矢田猛士)


雪上の足跡 2022.02.06

厳冬期の三瓶山北の原は一面雪で覆われていることが良くあります。純白の世界にポツ・ポツと何かの跡が見つかることがあります。連続したものであれば動物たちが残した足跡です。冬眠せずに冬でも活動をするテン、タヌキ、キツネ、それにウサギなどの足跡がよく見つかります。

ノウサギの足跡

(学芸課 安藤誠也)


雪と岩石 2022.01.30

降り積もった雪は、最初こそフワフワしていますが、時間がたつと硬くなってしまいます。雪自身の重みや、人に踏みしめられることによって、雪の粒と粒の間のすき間がなくなったり、雪の粒の表面が少し溶けて粒同士がくっついたりすることで、硬く締まっていくのです。この仕組みは、海や川にたまった土砂がやがて地下深くに埋没し、長い時間をかけて硬い岩石になる様子とよく似ています。

硬くなった古い雪(下半分の灰色の部分)と積もったばかりのフワフワの雪(上半分の白い部分)

(学芸課 今井 悟)